あくび


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2008年6月
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2008年06月29日(Sun)
< 地震 < 自由 | エッセイ/一覧 | 名古屋 >
あくび

 抱いている赤ちゃんより、父親の方が眠そうだった。気を利かして早めに帰った。昼を過ぎているのにあくびばかりしている。久々の日曜日の休みだというのに気の毒だ。3Kの代表みたいな仕事をしている。器用を見込まれて、血まみれで頑張ることもあると言っていた。潰瘍の破裂、静脈瘤の破裂で幸運にもまだ止血できなかったものはないと言っていた。それこそ幸運と本人も思っているのだろう。もう1人の方とローテーションでやっているので、担当したら責任は全部自分にあると言っていた。先輩がいなくなり、自分が先輩になったので、自分が最後の砦だとも言っていた。
 サッカーとバレーをしている時が一番輝いていた。スポーツで暮らしていけるならきっとそうしたかったろう。幼子は幼子のように、少年は少年のように、受験生は受験生のように育てた。青年は青年のように過ごしたのかどうか分からない。青年になれば無干渉だった。風の便りもはいってはこなかった。社会人になってからは、完全に独立して、良い家族より良い社会人であることをよしとした。
 30年前の僕をみているようだった。何も考えていなかった。がむしゃらにその日その日を暮らしていた。将来なんか全く考えてもいなかった。だからやってこれたのだ。延々と繰り返される営みがいとおしく感じられた。ほとんど本能に近いところで、赤ちゃんとしばし見つめ合っていた。

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