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栄町ヤマト薬局
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漢方薬を初め、天然素材の薬を用いて、さまざまな慢性疾患の回復のお手伝い

2008年6月
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2008年06月13日(Fri)
< 段ボール箱 < | エッセイ/一覧 | 絵画 > 活断層


 薬局の扉は、閉店まで開けっ放しなので、日が落ちてからは蚊が沢山入ってくる。その中の何匹かが、夜僕の耳元でうるさく羽音をならす。当てずっぽうに手で耳の辺りをたたいてみるのだが、余程運が良くないと殺せない。数回試みたあげく、結局は暑いのに布団の中に潜り込んで息苦しさのまま何とか眠りに就く。毎晩一度は目を覚まされて、蚊と戦う。電気を点けて蚊を捜したり、キンチョールをかけたり、線香に火を点けたりするのはどれも面倒くさいので、原始的な戦いを挑んでいる。
 牛窓に移り住んでいる芸術家が、夏の必需品を買いに来た。都会の人に人気のヤマト薬局特製の虫さされ軟膏がある。特製と言っても薬局製剤という薬を作る許可を持っていれば誰でも創れるのだが、そんな面倒くさいことは今の薬局のほとんどはしない。その軟膏も含めて色々持って帰ったのだが、彼女が「蚊もいないような所に住んでいた」と言っていた。僕が応対しなかったのでそれがどこか聞きそびれたが、蚊がいないような所があるんだと驚いた。僕も何箇所かで住んだことはあるが、蚊がいないところは知らない。高層ビルが林立している辺りを言うのだろうか。見るからに庶民とは縁のないところなので、実際に確かめることは出来ないが、蚊は飛んでいなくても、人の血を吸う悪魔は住んでいそうだ。蚊に血を吸われても、直径1cmくらい赤くはれてかゆくてもそれは耐えられる。10分もすれば収まってくるから。だが、弱い人の血を吸う悪魔は、生き血を吸い尽くす。あの手この手を考え出して不器用な人から血を搾る。満タンになった蚊はゆっくりと飛んで両手のひらの犠牲になるが、都会の「蚊」は満腹を知らないらしい。貪欲に血を吸い続け、手のひらからも余裕を持って逃げる。東京タワーに巨大な蚊取り線香をぶら下げないと、国中の不器用な人達が貧血になりそうだ。