コブラ


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2008年05月14日(Wed)
< 無用 < 海ブドウ | エッセイ/一覧 | 強者 > せせらぎ
コブラ

 偶然見た番組の一部だが、インドのある地域での日常の映像。僕は最初、何かのトリックか合成だと思っていた。ところが、ナレーションが、その生き物を地域の人達は神様と崇めているというのを聞いて、映像が真実だと分かった。見た人もいると思うけれど、どう感じただろう。
 台所で婦人が食事の用意をしていた。そのすぐ傍をコブラがゆっくりと這っている。子供が水道で足を洗っている。その傍をコブラが一緒に水浴びするかのようにゆっくりと這う。細い路地を人々が行き交う。コブラも同じようにその路地を移動する。人間とコブラの距離はどれも10cmくらい。コブラは神様だから人間に危害を加えないし、人間も神に危害を加えない。まさに共存しているのだ。咬まれても免疫があると信じている。まるで犬や猫のように気持ちが通っているかのような、高度に頭脳が発達した人間と、は虫類がさも心を通わせているような光景だった。数日たってもあの場面が折りに触れ思い浮かんでくる。あまりにも衝撃的な映像だったから。
 心など持っているはずもないは虫類とでも、何千年(?)傷つけあわない関係を作れば信頼の元に共存できるのだ。人間に比べてかなり短い寿命のはずの生き物が、世代を越えて、敵でないことを何故伝えられるのか分からない。何が介在してこんな不思議な関係が作れるのだろう。日本で言うとさしずめ、鳩やツバメとの関係だろうか。益虫や通信手段として大切にすれば、人間を恐れない。鳥類がは虫類に取って代わっているだけなのか。 コブラとだって信頼関係を築けるのに、何故か人間同士は難しいらしい。高度に発達した知能が邪魔するのか、発達しなかった何かが邪魔をするのか分からないが、悲しい報道が続く。許し合うこと、傷つけないこと、分かち合うこと、もはやどこでも、誰にも教えてもらえなくなったこれらのことが欠如した社会は、は虫類以下だ。自転車がすぐ傍を通ったときさすがに鎌首を上げて警戒したが、それでも危害が及ばないと分かると又ゆっくりと這い出したコブラにも負ける。喜怒哀楽を偏在して備えている現代人は、コブラの足下にも及ばない。ああ、コブラには足はないか。

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