老婆


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2008年4月
   
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2008年04月29日(Tue)
< ゴールデンウィーク < 挨拶 | エッセイ/一覧 | 芸当 > 本当は26.5cm
老婆

 実際にあったこと。90年代、韓国である交通事故があり、2人が死亡し数人がけがをした。加害者は服役した。出所後その加害者を、事故で孫を失ったおばあさんが養子に迎えたそうだ。当時韓国では奇跡が起こったと言っていたらしい。人を許すことほど難しいものはない。それからしたら確かに奇跡に等しいだろう。しかし、世の中には奇跡に近いことをやってのける人がいるものだ。凡人の僕らとしたら、憎むことがあっても許すことはまず無い。僕らの些細な善意を1万人分集めてもおばあさん1人に太刀打ちできない。 おばあさんは、その男を見るたびに、孫を思いだしたのではないか。その男を見るたびに苦しむのではないか。その男を見なければ、孫を思い出すことも時間と共に少なくなるだろうに。若い出所後の人間が更正して生きて行くには、被害者家族の本当の許しが必要だ。おばあさんは、ひょっとしたら、苦しみを克服したのではなく、苦しみながら善を行ったのではないか。どうせ苦しむなら、善を行いながら苦しんだ方がいいと考えたのではないか。
 世の中には苦しみが溢れている。家庭にも、自分自身の中にも溢れている。努力して懸命に頑張るのも苦しい。悪事をして逃げ回るのも苦しい。しかし同じ苦しさなら、「善を行って苦しむ方が、悪を行って苦しむよりはよい」。毎日多くの悲鳴が上がり、懸命にそれから逃げようとするが、苦しむ理由をほんの少しだけ生産的なものに変えてみれば意外と耐えられる。名もない老婆に教えられた人は多かったのではないか。