挨拶


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2008年04月28日(Mon)
< お母さんへ < ゴールデンウィーク | エッセイ/一覧 | 老婆 > 芸当
挨拶

 日曜日の朝、9時前だったと思う。犬を連れてテニスコートの傍を通りかかった。日曜日だというのに、青のおそろいのジャージを着た男子中学生がテニスをやっていた。部活動なのだろう、コートから溢れた学生達が張り巡られたネットの近くで素振りをしていた。幼い顔をしているから低学年かもしれない。僕が近づくと、何人かがバラバラに「おはようございます」と挨拶をしてくれた。見ず知らずの僕に挨拶が出来るのはすごいなと思いながら僕も挨拶を返した。
 何気ない挨拶だが、この柔らかい人間関係は価値がある。瀬戸内の穏やかな水面のように柔和な人間関係の中で、僕は子供達を育てたいと思っていた。少なくとも義務教育の間は、何にもましてこの人間関係を優先した。幼いときからの友達とよく遊び、弱いスポーツ少年団で身体を動かし、学校の宿題だけはする。これだけを満たしてくれれば十分だった。元々親もそんなに勉強が好きではないから、子供にだけ強いるようなことはしたくなかった。学校の勉強で十分だと思っていたから、塾には行かせなかった。子供達も行きたいとは言わなかった。受験のテクニックを磨いて、もう何十点稼ぎ出すことが人生で大切には思えなかった。それでもう1ランク上の学校に進んでも、人の役により立てると言う根拠は思いつかなかった。それよりもごく普通の人と同じ価値観を共有し、同じ地平で喜びや悲しみを分かち合える方が余程価値があると思った。
 かたくなにごく普通を通して、本人達はどう思っているか分からないが、少しは人の役に立っている風だから、それでよしとしてもらおう。その下の世代をどう導くのか、僕の入っていける余地はないが、せめて少子化時代、過酷な競争を強いられることなく、のびのびと子供時代を過ごして欲しいと思っている。