栄町ヤマト薬局 - 2017/02

漢方薬局の日常の出来事




2017年02月20日(Mon)▲ページの先頭へ
勲章
 同じ人なのに、体調や心調が整うとこんなに美しくなるものかと驚かされる。同じ目、同じ鼻、同じ口なのに、どうしてこんなに変わるのだろう。人工知能ならこの変化をどういった数字で表すのだろう。人の感性さえも人工知能は数値化できるのか。全くその世界に疎いから、疑問を投げかけるだけでなんら答えを持っていないが、表情の変化を機械は読み取れるのだろうか専門家に尋ねてみたい。
 僕はAIではないから、その変化をずっと感じ取っていた。少しずつ変わっていることを感じていたし、つい最近では「こんなにまで変われるのか」と驚きをもって見ていた。元々体調や心調が悪いにもかかわらず凛としていた。背筋はいつも伸びて、笑顔もこぼれていた。ただ、今の笑顔は当初の笑顔とは雲泥の差で、心からはじけるような笑顔をする。この変化に僕の漢方薬が貢献できたのだろうが、先日来た時にありがたい言葉を口に出してくれた。思いもよらなかったことだが「薬局に来て帰るときは気持ちがいいんです」と言ってくれたのだ。煎じ薬が出来るまで毎回10数分、あるコーナーで待ってもらうのだが、その場所は娘夫婦が智恵を絞って心地よく待ってもらえるようにしている。ドライフラワーなど、およそ僕とは縁遠いものが何気なく飾られているのだが、その雰囲気をさして気持ちよいと言ってくれるのか、或いは僕とのたわいないお喋りを言ってくれているのか分からないが、どちらにせよ、気持ちよく帰っていただけるのは薬局冥利に尽きる。
 そう言えば今回彼女が入ってきてすぐに、19日に総社市民会館で行われた備中温羅太鼓の定期公演のチケットを見せて和太鼓の薀蓄を披露した。そんなことでどうして漢方薬を取りに、わざわざ遠くから来てくれるのか分からない方も多いかもしれないが、ヤマト薬局の全てに嘘がないからだと思う。実力不足は多々あるが嘘はない。
 今日、面白い偶然があった。一人は隣町から初めて来てくれた方。夫婦のトラブルの漢方相談だったが、2人分で5000円だった。ところが、その値段が、レジをした姪の間違いだと思われたらしい。何でもその方は二人分で4万円を用意して来てたらしい。今まで岡山市の薬局に行っていたらしいが、そのくらいを用意していないとダメだったらしい。もう一人の方は関東の方だが、ある相談で地元の薬局に行ったら一月7万円くらいかかると言われたらしい。その相談の病気に使う商品らしきものを教えてくれた。同じ薬局として恥ずかしくて口に出せないが、恐らく何の相談に行っても同じものを勧めるのだろう。そんなレベルの薬局がむしろ評判なのだろうが、そうしたところでは「気持ちよく帰る」ことは出来ないだろう。来なければよかったと言う後悔とともに薬局を後にするのではないか。そもそも、漢方薬は高くない。それに健康食品なるものを引っ付けてきたら、断るべきだ。田舎に暮らしてみれば分かるが、本当の健康食品は海を泳ぎ、畑で出荷を待っている。
 若い女性の凛とした美しさ、心からの笑顔、田舎の薬局の勲章だ。


2017年02月19日(Sun)▲ページの先頭へ
運動
 近隣住民とのトラブルで、ほとほと参っている女性が相談に来た。勿論病院で治療を受けているが一向によくならない。以前舌痛症のお世話をしたことがあり、それを思い出して又相談に来てくれた。
 余程、僕の薬局と相性がいいのか1週間分の漢方薬でかなり治った。2週間飲んでもらってほとんど治った。症状は食事をしようと一口二口物を口に入れると途端にそこから入らなくなると言うもので、漢方薬が得意中の得意な症状だ。と言うことは現代医学の苦手としているところだ。漢方薬を作るのは簡単なことだが、その女性が抱えている荷物を下ろしてあげることが重要だ。そこで僕や娘が話を聞くのだが、娘は優しく頷いている。僕はそんなまどろっこしいことはしない。いつものように、藁で人形を作り、五寸釘を毎晩打ち付けるように助言した。すると患者さんは、最初は周りを気遣うように小声で症状を教えてくれていたのだが、その頃から大きな声になり、周りが気にならなくなったみたいだ。最早正々堂々と、その近所の極悪人について話し出した。ろれつもえらい回りだして、滑舌も良くなった。最早舌?好調だ。恐らく近所の極悪人のことだから、人様に喋れば倍返しを食らうと思って誰にも不満を打ち明けていなかったのだろう。
 帰るときに、病院の先生からは運動を勧められたと教えてくれた。その先生がどういった意味で運動を勧めたのか、そしてその事をどうして僕に敢えて教えてくれたのかわからない。戸を開けた瞬間から行動を監視されている人が、どうして運動に出かけられるだろう。忙しい病院の外来で、実際の患者さんの苦労の周辺まで理解するのは不可能だ。主症状に関して薬でなんとか抑えようとするしかないだろう。ところが僕の薬局みたいに暇だと周辺症状まで分かってしまう。だから解決方法も自ずと浮かんでくる。ただ僕も病院の先生が勧めた運動を否定するものではない。ただ僕の勧める運動は、口の周りの小さな筋肉の運動だ。その筋肉を一杯使わせてあげれば随分と楽になる。


2017年02月18日(Sat)▲ページの先頭へ
苦痛
 アホノミクスとカルタが抱き合っている写真を見た。気持ち悪い。嘔吐しそうだ。よほど気が合うのだろう。普通の人間なら「こいつとだけは同じように見られたくない」と思うだろう。どっこいこの二人はお互いそうは思わないらしい。何十時間一緒にいても、何回食事を一緒にしても苦痛ではなかったのだから。そんな光景を見せられた普通の人間はどれだけ苦痛だっただろう。
 片や戦争犯罪人の孫、片や成金。どうしてこんな人間にそれぞれの国民がこびへつらわなければならないのだ。アメリカ人なんぞたいしたことがないと世界に露呈した。日本人もたいしたことがないと世界に露呈した。
 日本人は正しいことは正しいと主張し、強い人間には抵抗し、弱い人間を助ける、そん潔さ(いさぎよさ)はもうなくなったのか。武士は食わねど高楊枝は今は昔か。美しい国を標榜しているのは、自分達が都合の良い美しい国で、貧乏人が自分達に頭を下げ従順でい続ける美しい国だ。道徳とやらで潔癖さを貧乏人に強制し、自分たちはやりたい放題。あいつ等に美しい国など作らせてはいけない。庶民には鬱苦しい国だ。


2017年02月17日(Fri)▲ページの先頭へ
機関紙
 ある県の保険医協会という医師と歯科医師の団体の役員をしている後輩から、ある会合で、薬剤師を蔑視するような発言が出て、薬剤師であり歯科医師である後輩が、医薬分業に対する認識不足を正してもらうために、自身の見解を機関誌に載せてもらおうと思ったらしい。下書きを読んでと文章を送ってきてくれたのだが、それに対する僕の返事。


 読ませてもらって、付け加えるところなどありませんし、まして訂正するところなどありません。むしろ、そうなのか、そうなのかと感心しながら読ませてもらいました。改めて、医薬分業の歴史とか、功罪等を認識させられました。この文章が機関紙だけに載るのはもったいないと思いました。もっと、消費者の目に止まってもいいかもしれません。
 不快な事を言われたお医者さんは、良い薬剤師と巡り合っていないのでしょうね。もし巡り合っていたら一般論の前に立ち止まることが出来ます。多くのものの中には陰陽がバランスを保って存在しているものです。どちらに多く接するかは人間性による引力が決めます。
 あなたの文章を読んで頭に浮かんだ言葉があります。それは台詞と言葉の違いではないでしょうか。1つの医院に従属するかのごとき薬局は、処方箋を持ってくる人に、最大公約数を満たした台詞を口に出せばいいのです。マニュアル化してパソコンが誘導もしてくれます。処方箋を運んでくる人たちに、国が求めている最小限のことをすれば、経済的な見返りも得られます。
 一方、あなたの言う地域の細々と生き延びている薬局は、僕などその典型ですが、台詞ではいけません。まるで日常の延長で薬について、健康について話をします。「さっき帰った母ちゃんが悪口を言っていただんなが、その後すぐに入ってくる」こんな場面は日常茶飯事です。これをどちらも健康に、幸せに裁かなければなりません。マニュアル化した台詞ではできるはずがありません。病状が気になる人にはわざと来させて、こんこんと・・・・笑わせます。勿論それは無報酬で、投薬指導とかかかりつけ薬剤師とかの報酬はもらえませんし、いりません。
 町の薬局が質の高いことは出来ません。40年OTCや漢方薬をやって来て、これだけはどの医者にも負けないでしょう。ただし、調剤に関しては、どの卒業したての薬剤師にも負けます。質の高いことは、あなたの言う病院薬剤師に任せて、町の薬局はひとつくらいの得意技を持つくらいでこらえてもらうしかないでしょう。薬と言うただの化学薬品を人の心と言うオブラートで包んで患者さんに飲んでもらう、その程度で得意技以外は許してもらう。
 僕はもうここまでですが、6年制卒業の薬剤師たちは、その得意技を多く持つ力があります。そうした人たちがこれからはどんどん業界に入ってきます。心無い言葉を吐いたお医者さんも、いずれはそうした能力ある薬剤師達と巡り合い、考えが変わるのではないでしょうか。勿論、心と言うオブラートは若くて優秀な薬剤師にも必需品ですが。

いい物を読ませてもらってありがとう。

大和


2017年02月16日(Thu)▲ページの先頭へ
渋滞
 面白い偶然だ。2週間前に僕はかの国の女性達を連れて鳥取県の智頭町に雪を見にいった。帰国にあたって、雪景色を見たいと言ったから思い出作りに協力した。恐らくもう2度と日本に来ることはないだろう人達だから、南国では見られない景色を記憶にとどめておいてほしかった。案の定、まるで子供のように楽しんでくれたが、その智頭町を僕が選んだことに貢献してくれた人が今日薬局に訪ねてきた。
 彼は、ある製薬会社の社員なのだが、丁度大雪の時に鳥取市に出張だったらしい。国道に沢山の車が渋滞し、半日近く閉じ込められた日だ。確か70台と報道されていたような記憶があるが、正にその中の1台が彼だったのだ。岡山県の真庭辺りから美作を通って智頭町に入ったらしいが、鳥取道でついに通行止めにあい、国道に下りた時点で動けなくなったらしい。彼も北国の人間ではないからかなり怖かっただろうと思うが「車って、結構大丈夫なものですね」と何回か繰り返した。その意味は、ずっとエンジンをかけっぱなしだったらしいが、11時間止まらずに動いてくれたことへの感謝の意味だ。電気を消して、エアコンをつけ、時々降りては雪かきをして、一酸化炭素中毒を防いでいたらしい。勿論危険だから眠らなかったそうだ。何か食べたのと聞くと「付近のおじいさんがおにぎりを1つ配ってくれた」と言っていた。そして後ろに止まっていたトラックの運転手がガソリンがなくなるから車に乗せてくれと言ってきたらしい。生憎荷物を一杯積んでいたので乗せてあげれなかったが、その後ろのトラックに頼んで乗せてもらったらしい。雪の中、連帯感が生まれて助け合っていたことが分かる。「いい経験をしたね」と言ったのは、そのあたりのことを僕は指していた。
 僕が智頭町に行こうと決めたのは、実はその大雪で渋滞している光景をニュースで見たからだ。その1週間後くらいに予定していたのだが、あれだけ降ればさすがに雪は解けないだろうと思った。案の定、まだ雪は十分残っていて、雪景色や雪の感触を楽しんでもらえたが、あの渋滞の中に知り合いがいたとは驚いた。偶然とはいえ、面白いものだ。人の災難を情報源として申し訳ないが、笑いながらネタばらしをして、それぞれの智頭町で盛り上がった。



2017年02月15日(Wed)▲ページの先頭へ
五寸釘
 都会だけの話しかと思っていたら、こんな田舎にもあるんだ。牛窓の人のよさを自慢しているが、中にはこうした人もいるんだと驚いた。もっとも何処に行っても人それぞれで、悪意がもぐりこむのは避けられない。偶然1週間のうちに二人その種の原因で漢方薬を作ってと言ってきたので、印象に残った。
 二人の相談者に共通するものがあるとすれば、昔からの町並みに家があり、正に家同士が接触しているかのごとく並んでいると言う点だろう。昔からの町並みは道幅も狭く、隣の家の食事が匂いで分かる。恐らく出かけたり帰ったりも分かるに違いない。興味を持てば人間関係さえ分かってしまう。ただこのことは決して欠点でも不自由でもない。役に立ったり心地よいことのほうが圧倒的に多い。ただ、これが運悪く隣人と揉め事を起こしたりしたら大変だ。逃げ場所や緩衝地帯がなくなるから、波が津波のごとく増幅され、垣根を簡単に越えてしまう。
 どこにでもあることはどこにでもある原因によって引き起こされたみたいで、片やペットが引き金、片や妬みが引き金だ。実際の行動も然りで、片や騒音おばさん、片や侵入おばさんみたいだ。ただ被害者の体調不良は似ていて、二人とも食べられなくなって痩せていた。
 こうした人を治すのは得意で、一人は翌日には数ヶ月の苦痛がほぼ解消し、他の一人も1週間でほぼ解決した。漢方薬の力もあるが、まじめくさらない僕の治療方法が効を奏したかもしれない。ただ、藁人形を作って五寸釘を打ち込めと勧めたら、それをやられていると言われたのにはまいった。



2017年02月14日(Tue)▲ページの先頭へ
精神的苦痛
 精神的苦痛(うつ、不安の症状)が重くなるほど、大腸がんや前立腺がんのリスクが高まり、精神的苦痛は発がんの予測因子となる可能性があることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのG David Batty氏らの検討で示された。精神的苦痛とがんとの関連については、(1)精神的苦痛に繰り返し曝されるとナチュラルキラー細胞の機能が喪失して腫瘍細胞の増殖を招く、(2)うつ症状は視床下部-下垂体-副腎系の異常をもたらし、とくにホルモン関連がんの防御過程に不良な影響を及ぼす、(3)苦痛の症状は、喫煙、運動不足、食事の乱れ、肥満などの生活様式関連のリスク因子への好ましくない影響を介して、間接的に発がんの可能性を高めるなどの機序が提唱されている。
 この知見は英国の16研究の参加者16万人以上を解析して分かったことらしい。学者が調べて発表すればなるほどなと得心してしまうが、こんなことはなんとなく誰もが感じていることではないか。若くして癌で亡くなる人を見ていると、あまりにも頑張ったか、あまりにも不幸だったか、あまりにも発がん物質と接触しすぎたかなどと素人ながらに想像はつく。あまりにも普通だった人にはこの病気は来にくいのではないか。
 今日も「なんでもなかった」と喜んで入って来た女性がいる。どう見ても怪しいから、懸命に説得して病院に行ってもらった。一番なりたくない病気の条件をなんだかクリアしてしまいそうなので、僕の手には負えない。勇気がある女性で、僕の漢方薬で治すというが、敵が見えないのに作りようが無い。幼い時から不運で、まともに育つのも難しかったが、何とか全うな道を歩み続けてこれた。上記の条件を全て満たしている人だから、若くてもひょっとしたらと心配していた。懸案が一度に吹っ飛んで、いい顔をしていた。そのリスクを下げるために日常をもっと律すればよいと思うのだが、健康なときにはなかなか難しい。追い詰められて、惑い苦しみ、そこでやっと改心しそうだが、喉もと過ぎれば皆同じで、努力してまで健康であり続けようとはしない。世の常、人の常だが、とても人間らしくて、そこまで否定しようとは思わない。
 うつや不安の反対は、僕は笑いだと思っている。笑いで癌をやっつけるような真面目な取り組みがもう何年も前に行われ報道されていた。効果は実証済みだが、その笑いが身近に無いと始まらない。僕の薬局には、それだけは溢れている。そのためだろうかつい最近「先生は誰に似たんですか?」と尋ねられた。誰に似たのか分からないが、これで失ったものも無いからよしとしている。




2017年02月13日(Mon)▲ページの先頭へ
虫歯
 「虫歯なんか一本も無いよ」と彼に豪語されたら立つ瀬が無い。
 確かに彼は甘いものを食べない。と言うか、食べれない。勧めても「いらない」と返してくるし、そっとお茶やコーヒーなどと一緒に出していても手をつけたのを見たことがない。酒飲みの特徴なのだろうか。酒飲みでも、少しくらいは無意識に口に運ぶと思うのだが、彼はそれすらない。大酒のみの特徴だろうか。
 タバコもすごい。僕より身長も体重もないが、よくもあれで健康でおれるなと言うくらいタバコを吸う。僕と同じ年齢だが、どう見ても老けている。当然活性酸素の攻撃を受けて、顔にはしみも皺も多く、10歳は年上に見える。僕みたいに髪が薄くなったのではなく、もう彼は髪自体が無い。引越しを手伝ってもらった次女三女は、彼のことを「あのおじいさん」と表現する。その言葉を発しても不思議ではない。僕ら年齢になると前後10年くらいの差ができるらしいから、正にプラス10を行っている人だ。
 博打で身上をつぶすくらいだから、毎日がスリリングだったろう。そうした緊張感の中で暮らすと交感神経が優位になり活性酸素が出まくりで、自分自身を自分自身が攻撃していることになる。内部から攻撃されるのだから防ぎようが無い。かくして老化が一段と早まる。その結果、唇などは紫色になるくらい血液が滞っている。歯槽膿、漏歯肉炎、なんでもござれのはずなのに、虫歯が一本もないとは運がよすぎる。
 僕は彼に長生きできないと宣告しているが、まだ生きている。若くして亡くなった人を冒涜するかのような生活ぶりで、長生きでもしたら死んだ人が浮かばれない。法務局には2度出張したが、今だ入院はしたことがない。そうしてみれば波乱万丈の人生の割には結構幸運なのかもしれない。「〇〇君に虫歯が無いなんて、運がよすぎるわ。僕なんか一杯あるのに。それに感謝して人様の為に生きられえ(生きなさい)」と諭すと、「何で人様のために生きんとおえんのん(生きないとダメなの)虫歯が一本もないのは総入れ歯じゃからなのに」
 またまた1本とられた。でも許す。〇〇君は歯医者に全部取られたらしいから。


2017年02月12日(Sun)▲ページの先頭へ
トイレ事情
 知って得もしないだろうが損もしない。まあ、後学のためくらいな気持ちで目を通してもらえればと思う。僕自身は結構衝撃的だったけれど。
 食事が終わるのを待って三女が「お父さん、トイレで流したものは どこに行くのですか?」と尋ねてきた。日本に来たときからずっと誰かに尋ねてみたかったらしい。野菜が少ないと便秘をするという話をしていたからその延長で聞きやすかったのだろう。そこで浄化槽や下水道のことを説明してあげた。すると得心がいったようで気持ちの引っ掛かりから解放された様子だった。
 それに乗じてと言うわけではないが、逆にあちらのトイレ事情を尋ねてみたくなった。と言うのは僕自身も随分長い間、尋ねてみたかったことなのだ。もう何十人もいる、かの国の娘達が「オトウサン ゼッタイ キテクダサイ」と言いながら帰っていくが、正にトイレ事情が気になっていた。水洗トイレ以前を当然経験しているから、いざとなれば大丈夫だろうが、ただもう40年くらいは経験していないから自信はあまりない。行ってみて耐えられないようなら帰国するまで便秘になりそうだ。
 三女は山の上に家があるから、大きな穴を掘っていると言った。恐らく昔の日本のようなものだろう。次女はメコン川のほとりに家があるから三女とは全く異なる。さすがメコン川に近いだけあって、そこに流れ込む支流も多く、又その支流に流れるように小さな水路が一杯あるらしい。そしてトイレはと言うとその小さな水路へ直接落とすらしい。水路はトイレのところだけ柵がしてあり小さな魚が一杯いる。その魚が人間の便を食べてくれるのだそうだ。えさは大便だけらしい。人間が用をたそうとトイレに入ると、魚が一杯集まってくるらしい。「楽しいですよ」と笑いながら言うが、「思わず釣りたくなるのではないの?」と尋ねると「その魚は、食べない」とこれまた笑いながら答えた。
 山では畑の肥やしに、川では魚の餌に。理にかなっている。正に自然の循環だ。昔の日本と同じだ。同じような経過を辿って今の日本のようになるのだろう。何十年先の未来にやって来た人間と、何十年前の過去に遡る僕ら夫婦と、不思議な共同生活だ。「お父さん、一緒にダラットで暮らしましょう」と言ってくれるが、魚にあの姿を見られたくはない。


2017年02月11日(Sat)▲ページの先頭へ
 施設に着くと、母は広いホールに並べられた沢山のテーブルの1つに背を向けて腰掛けていた。後姿と言うか、後ろ頭で母を見つけることが出来る。もう何年も通い続けているから覚えた。同年代の同じような症状の方の集団だから、皆さんとても似ていて、最初の頃、見知らぬおばあさんの車椅子を押して話しかけていたことがある。どっちみち会話は成立しないのだから、よそのおばあさんに親切にしても一向に構わないが。
 寒いから外に連れ出すことは出来ないが、気分転換に長い廊下を行ったり来たりすることにした。車椅子のストッパーを外すのに、持参していた薬剤師の情報誌が邪魔になったので、母に手渡して「ちょっと持っていて」と頼んだ。すると母はそれを受け取りしっかりと持っていてくれた。ホールから廊下に出てまずは突き当りまで車椅子を押した。突き当たったところは、鉄の扉なのだが、窓ガラスが結構低いところまであって、車椅子に腰を掛けたまま外が眺められる。別段良い眺めではないのだが、少しでも外の世界に触れてもらいたいから、寒い日にはそこに連れて行く。車椅子の後ろに立ち母を見下ろすと、さっき持ってもらっていた雑誌を開いて母が見入っていた。そして少し時間を置いてページを捲った。偶然かと思っていたが、その動作を何度も繰り返した。そばで見ていると、本当に雑誌を読んでいるようだった。それはそれは真剣な顔をしていた。ただ無表情だっただけかもしれないが。
 その後面会室まで帰って、僕は母を正面においてソファーに腰掛けてその雑誌を読み始めた。息子の欠点で、母親との会話は苦手で、だからと言って姥捨てにした罪悪感は拭えずに母をしばしば訪ねるのだが、口を利くのは5分に1回だ。今日も沈黙の中一所懸命僕は雑誌に目を通していた。すると何かの拍子に雑誌を低く持った時に母が反対側からその雑誌を食い入るように見ているのに気がついた。その時に思った。母は字を追っているのではないかと。そう言えば母は施設から連れ出したときに、大きな看板を見つけると必ずそれを読む。かなり難しい漢字でも正確に読む。ひょっとしたらと僕の胸に大きな期待が膨らんだ。もしかしたら、母が興味を持ちそうな本を持って行ったら読むのではないかと思ったのだ。施設のスタッフや家族の勝手な思い込みで、痴呆の人は読書などしない、出来ないと思っているのではないか。
 次回訪ねる時に早速実験をして確かめたいと思っている。


2017年02月10日(Fri)▲ページの先頭へ
玉石混交
 どの項でお知らせすればいいのか迷ったが、このブログを読んでくださる方が一番多いので、面白くないかもしれないがお知らせしておく。
 まさか僕の漢方薬を飲んでくださっている人がこんなものに手を出すとは思わないが、ひょっとしたら僕の過敏性腸症候群の漢方薬を2週間だけ試みに?飲んだ人の中にはいるかもしれない。過敏性腸症候群の方はドクターショッピングが非常に多いことが知られているが、基本的には薬以外に手を出すべきではない。
 僕は初耳だったのだが、青薫(せいたい)と言うリュウキュウアオイなどの植物から作られた健康食品を個人の判断で潰瘍性大腸炎に効くとして摂取している人がいるらしい。何でも関東のほうの薬店がよく売っているらしいが、それによって起こった重篤な副作用に関して、厚生労働局から知らせが届いた。それによって肺動脈性肺高血圧症が発現したらしい。聞きなれない症状だが、動くと息切れがし、下り坂でも息切れがしてくる。しまいには椅子に腰掛けて何もしなくても息切れがするらしい。これはしんどいだろう。
 注意喚起を期待された漢方薬の会社が、青薫の実物を持ってきてくれた。ビニール袋に少しだけ入れたものだが、青と言うよりセメントの粉みたいな粉末だった。これを薄めていくと、本来は染料(藍)だから綺麗な青色になるのだろう。セールスいわく「よくこんなものが飲めますね」のとおりで、これを体の中に入れるのはかなり勇気がいりそうだ。ただ、藁にもすがりたい人にはそんな恐怖感もわかないのかもしれない。
 インターネットの世界は、或いは世の中はと言ってもいいが、玉石混交の世界だ。残念ながら、どうでもいいような、悪意に満ちた情報が目によく止まり、なかなか宝石にはめぐり合えない。仮にめぐり合っていても、自分に好ましくない情報はブロッキングを起こしているから、有効には使えない。全うな知識は情報の多さには必ずしも比例しないことが分かる。


2017年02月09日(Thu)▲ページの先頭へ
親子3代
 一目でよいことが起こったと分かった。笑顔で入ってきたし、手には如何にもお土産だと分かるものを持っていたから。
 10日くらい前に、まだ営業していない時間帯に電話がかかってきた。ある女性の悲壮な相談だった。「今日は私のことではないんです。娘がセンター試験の後、毎日起きてこないんです。ずっと布団の中にいます」と言う内容だった。何でも、センター試験が思うように出来なくて、ショックのあまりずっと寝てばかりらしい。5日後に京都に受験に行かなければならないのに、このままだと行けないと言うのだ。起こそうとしても体がしんどくて起き上がれない。食事も辛うじて食べる程度。本心かどうか分からないが、お母さんとしては、もう受験は諦めるが、このまま心を病んでしまうことが心配だと言っていた。実はお母さんも結構繊細で、ある心のトラブルを漢方薬で克服してもらった経緯があるから、僕もお母さん以上に心配だった。と言うのは、心のトラブルって結構遺伝するのを見ているから、今回のことをトラウマにしないようにしてあげなければと、その時決めた。
 お母さんは、心療内科にだけは行かせたくないという希望だった。僕はあわよくば受験させてやろうと決めたので、お母さんにお願いして1週間分だけかなり高額な薬を作らせてとお願いした。僕は田舎の薬局で庶民相手に仕事をしているから、漢方薬と言えどもかなり低額に抑えている。ただ、癌の方だけは1日分が1000円を越えて心苦しく思っている。このお母さんは僕の提案を快く受け入れてくれ、1日分が4000円近い薬を作らせてくれた。勿論、1種類の薬でそんなにするものは無く、心身ともに元気にする漢方薬、不安とイライラを繰り返す人のための漢方薬、そして極めつけの心を一瞬にして解放してくれる漢方薬(これが高い)の3種類を飲んでもらうことにした。車で40分くらいかかる所から飛んで来て、又飛んで帰った。一刻も早く飲ませたかったのだろう。
 「ありがとうございます。翌日から自分で起きるようになって、勉強もよくし受験に行けたんです。受かるかどうか分かりませんが、そんなことはどうでもいいです。受験に行けたのが嬉しくて嬉しくて」と何度も礼を言われた。お土産は定番の八橋でなく見たことが無いようなものだった。敢えて八橋でないようにしてくれたのではないかと、僕は感動の共有を忘れて、お土産ばかりに目が行っていた。これで合格でもしたらどんなお土産をもらえるのだろうと、もう次に期待する。
 よく医学雑誌などを読んでいると、親子2代を世話しているとか、親子3代を世話しているとかと言う文章に出くわすが、僕もそろそろそんな年齢になったのだと今回のことで思った。親子3代の世話をするまで現役でいたくは無いが、下手をすればそうなる可能性もある。いやいや、もしそうなれば幸運だと言うべきか。


2017年02月08日(Wed)▲ページの先頭へ
物忘れ
 ある御夫婦が漢方相談にやって来た。見るからに恵まれた生活を送って来た人達と言うのがわかり、それが今も続いていることも分かる。相談しに来なければならない体調不良も、歳相応のもので現代医学では治りにくいと言うだけだ。総じて恵まれている人なのだろう。
 その方が持参してくれていたお薬手帳を覗いているとドネペジルと言う薬の名前を見つけた。さっきまでの印象がその瞬間覆されるような想いだったが、ただそれを飲んでいる事が不自然だった。こんなに元気で、こんなに礼儀正しくて、頭もさえているのに、どうして痴呆症の薬を飲むのだろうと気になった。本人がこの薬の用途をしっかり聞いて理解していればいいが、医師や調剤薬局で説明を聞いていない可能性もある。だからどうしてこの薬を飲んでいるのか尋ねるのが気が引けた。ただし、あまりにも不自然だったので思い切って尋ねてみた。自ずと言葉は選んだが。「このドネペジルって薬は御主人どうして飲まれているの?何かご自分で歯がゆいことでもあるのですか?」と。するといつか医師に、最近物忘れがひどくなったと言ったらしいのだ。すると医師は「親切にも」この処方を出してくれたらしい。アルツハイマーのテストでもしたのかなと尋ねたら、そんなものはしていないらしい。「御主人、物忘れをするようになったと言われたけれど、物忘れしたことを忘れているの?」と尋ねると、「ちょっと考えれば思い出しますよ」と答えた。これで決まり。僕はどう見ても必要ないと思った。
 ただし、悲しいかな、ここで僕がその薬をやめさせる権限など無い。処方した総合病院の医師に頼むことも出来ない。処方箋を僕のところに持ってきてくれているのなら勇気を出して言えるかもしれないが、全く無関係なのに何も言えない。考えた挙句、次回その病院にかかるときに「最近、頭がさえてきたような気がするから、あの物忘れの薬は必要ないと思うのですが?」と尋ねてもらうことにした。
 ちなみにドネペジルの添付文書には以下のような文章がある。これから逸脱したら保険診療の対象外になる。

本剤は、アルツハイマー型認知症と診断された患者にのみ使用すること。
(2) 本剤がアルツハイマー型認知症の病態そのものの進行
を抑制するという成績は得られていない。
(3) アルツハイマー型認知症以外の認知症性疾患において
本剤の有効性は確認されていない。

 このように決して物忘れの薬ではない。物忘れの薬だったら一番に飲ませなければならない人間がいる。アホノミクスが筆頭だ。その場その場で保身の言葉を連発し、相手を攻めることしか知らず、昔言った言葉など完全に忘却の彼方だ。と言うより、言っている瞬間から何もわかっていないのだろうが。
 薬の添付文書に書いているようにアルツハイマーの病態の進行を抑制もせず、有効性も認められていないものがそもそも薬として許可されている事がおかしい。これもまた製薬会社に天下った役人達の手柄だろうか。
 歳相応と言うより、随分と若く見える人に不必要な薬を飲ませて、誰が何を得るのだろう。こんな不思議なことが恐らく日本中に蔓延しているだろう。薬の世界だけではないはずだ。美しい日本、鬱苦しい日本。


2017年02月07日(Tue)▲ページの先頭へ
飛行機代
 貸した1万円を返しに来たのかと思ったら、「お願いがあるんじゃけど」と開口一番に言われたので「〇〇君、もうだめだよ!」と断った。ところが重ねての無心ではなく、沖縄に行くにはどのくらいお金がかかるかインターネットで調べてほしいと言う用件だった。例の1万円は年金が入るまで待ってのことだったが、そんな経済状態で沖縄に行くと言うのはもってのほかのように常識的には思ってしまうが、そんな常識があったら酒や博打で身上は潰さなかっただろう。
 何でも大学時代の仲間が沖縄に誘ってくれているらしい。体育会系の大学だから結びつきが深いのだろう。40年も経って「飲もう」なんてのは僕の辞書には無い。僕は、岡山空港から沖縄行きが出ているのかどうかも知らないし、そもそも飛行機など乗るつもりもないからまったく知識が無い。それでも知っておいてもいいかと、なけなしの好奇心を振り絞って調べてあげることにした。飛行機代って何で決まるのか知らないが、結構飛行機によって差があり、往復5万円くらいの相場と理解した。その事を告げると予想外に高かったらしくて、すぐに諦めの言葉が口から飛び出した。ついでに、飛行機の時間や、岡山駅から空港までのバスの便などを調べているうちに、経済以外に沖縄行きを妨げるものは無いと思い始めたのか、再び話を蒸し返し始めた。
 「本当は飛行機なんか乗りたくないんじゃ。今まで4回くらい乗ったけど怖かった。落ちりゃせんかと本当に手を合わせて拝んでいた」「僕も怖くて乗れんわ」「もし落ちたら、保険の受取人を大和君にしておいて上げるわ。どうせ家族は死にそうな人間ばかりじゃから、金を残しても仕方ないじゃろう」確かに離婚して今はお兄さんと住んでいるが、お兄さんは癌で闘病中だ。もう1人のお兄さんも同じ病気らしい。「そりゃあ〇〇君、ありがたいわ。そんなら落ちそうな飛行機になるべく乗って!」「マレーシアの飛行機にでも乗ろうか」「そうそう、毎日でも乗ってくれる!宝くじより確率が高いんじゃないの。楽しみにしているからな。そのお金でお墓くらい僕が作ってあげる」「墓なんかいるもんか。死んだら終わりじゃ」「そりゃそうじゃ、悪いけど、お墓代も倹約するわ」「悪いことなんかねえわ。しっかり使って頂戴」
 健康を売る薬局にふさわしい夢のあるひと時だった。


2017年02月06日(Mon)▲ページの先頭へ
単純明快
そうか、動物の中で親の世話を子がするのは人間だけなのか。意識したことが無かったから、そう言われてみるとそうかもしれない。子を慈しむ気持ちは動物には共通なんだと、涙さえ誘われる映像をしばしば目にするが、確かに子が親の世話をしている映像は見た事がない。だから人間はすばらしいと、その女性映画監督は述べていたが、最近ではどうもどちらかと言うと自然の摂理の方に近寄りつつあると思う。とか言う僕も正にその一群で、母を姥捨てしてとても世話をしているとは言えない。
 自然界では親の世話をするほうが不自然らしいから、僕はどうやら自然らしい。ただ、人間様の道徳にはかなり反している。人間の寿命が短くてころっと死んでいた頃は動物に近かっただろうが、ひょっとしたら動物そのものだったかもしれないが、これだけ長生きするようになるところっとは難しく、目の前で苦しんでいるのを見ておれなかったのかもしれない。太古の時代には、看病はあったかもしれないが介護は無かっただろう。
 世間では、僕を含めて子に不満を持っている人はわんさといるだろう。ただ、この事実を知ったら、そうか自然に回帰しているだけかと何か吹っ切れるものを感じはしないだろうか。先祖帰りならぬ太古帰りをしていると思えば、気持ちが随分と楽になる。動物は親の世話をしない。なんて単純明快。胸のつかえが取れそうだ。





2017年02月05日(Sun)▲ページの先頭へ
智頭町
 トンネルを抜けると同じ景色だった。その次のトンネルを抜けるとちょっと不安になってきた。その次のトンネルを抜けると、失望に変わった。その次のトンネルを抜けると後悔し始めた。その次のトンネルを抜けると山の陰になっているところにかすかに雪の跡を見つけた。その次のトンネルを抜けると初めて「そこは雪国だった」。胸をなでおろした。
 さすがに中国山地を越えようとするのだからトンネルが多い。何故か知らないがトンネルの中を電車が走るときに大きな音がする。電車でトンネルを通るのは新幹線くらいだから、こんなに大きな音がすることを経験していない。それが普通か、それが異常か分からない。ただ、智頭に到着する前に随分と長いトンネルを通ったのだが、途中までは登り、途中から下りになったのには驚いた。体感だから正確ではないかもしれないが、あれは明らかにトンネルの中で勾配が変化した。珍しくて貴重な体験だった。
 貴重な体験と言えば今日の体験の全てに感謝しなければならない。帰国するかの国の女性達がいなければ絶対経験しないことだった。この寒い時期に北へ行く。それもかの有名な豪雪で車がたち往生する常連の地、智頭町にわざわざ行くなんて。南の人間にとっては命がけみたいな場所だ。なんら雪に対して知識が無いから、漠然とした恐怖感がある。僕など比べものにならないくらい雪に関して無恥なかの国の女性達はなおさらだ。あまりの喜びでそこらじゅうを走り回ったりしたものなら、水路に落ちてあの世のほうに行ってしまう懸念がある。だからそこは通訳を介して何度も説明した。
 智頭町の観光案内をするつもりは無いから、強烈な印象を持ったことについて書いてみたいと思う。一番興味深かったのは、町中に水路が張り巡らされていて、水が勢いよく音を立てて道路の下や側溝を流れていることだった。歩いていると道の下から大きな音がするので覗いてみると、勢い良くグレーチングの下を流れている。10日くらい前の豪雪が解けているのだろう、どの側溝も勢い良く低いほうに向かって流れている。町の中央を流れる大きな川に向かっているのがよく分かる。盆地だから側溝の勾配が手に取るように分かる。
 もう1つは、町がひっそりとして人にほとんど会わなかったのに、確かな生活観に溢れていたってことだ。どんな産業に従事している人が多いのか分からないし、どういった特殊な職業の人がいるのか分からなかったが、町は人は明らかにそこで生きている。そこでしっかりと生活することによって、この国の空気を浄化している。山を守り田を守り、清流を守ることでどれだけこの国に貢献し、どれだけのこの国の人間の道徳の劣化に歯止めをかけているのだろうと思った。見ず知らずの僕達に向こうから自然な挨拶をしてくれたり、案内を買って出てくれたり、恩着せがましくない自然な交流が僕はもとより、かの国の若い女性達にも心地よかったみたいだ。
 春には帰国し、恐らく2度と来ることはない女性たちに、いつまでも覚えてくれるかもしれない心のお土産を、かの地の風景と人情に頂いた。車窓に広がるあたり一面の白いキャンパスは、僕の晩年に与えられた大いなる惠だ。


2017年02月04日(Sat)▲ページの先頭へ
安堵
 「あの頃ワタシ、本気で死ぬんではないかと思っていた。朝、目が覚めると、ああ死ななくて良かったと毎日思っていた」
 あの頃からもう半年過ぎたが、そんなに悲愴な気持ちで薬を取りに来ているとは思わなかった。以前、頻繁に僕の薬局を利用してくれていた女性だが、ある日を境にパタッと来なくなった。幸せに健康的に毎日を送ってくれているものと思っていた。大体僕の薬局でぴたっと来なくなる人は、完治したか入院したかが多いから、40歳になったばかりの女性が来なくなったら完治したと思うのが自然だ。彼女は当然完治組だが、その後の不調はドラッグストアでまかなえていたらしい。ところが1年位前からかなり深刻な状態が続きそこから脱出できなかった。そこで数年ぶりにやってきたのだが、僕なら役に立てるトラブルだった。どうしてもっと早く来なかったと思うが、棚に並んだ薬を取る癖がついたから、それでなんとかなると思ったのだろう。
 それにしても毎朝生きていて良かったと安堵する不健康さは、心細かっただろう。家族内の空気を知っているし、交友関係が極端に狭いことも知っているから、孤軍奮闘していたのだろうが、それには限界がある。どういう理由か知らないが極端に医療機関を恐れるから、よほどのことがない限りかからない。本人以上にこちらが「生きていて良かった」と安堵することのほうが多い。「絶対若死にだ」と言う僕の予言を毎年裏切り続けているが、出来れば永遠に裏切り続けて欲しい。勿論この予言は本人には言ってある。そんなことが言える薬局なのだ。
 人生でつじつま合わせがあるとしたら彼女は典型的だ。何の幸運のいたずらか分からないが、牛窓に嫁いできてからはかなり女神に守られている。是非プラスマイナスゼロで終わって欲しいと思う。勿論あと40年後ぐらいに。それを僕は見届ける。その頃僕は100歳を十分越えているが。


2017年02月03日(Fri)▲ページの先頭へ
1分
 その場に1分いるだけで確実に死ぬ。そんな場所が一体他に何処にあるのだろう。これが絶対事故など起こらないと豪語していた場所の末路だ。その事を口に出して大もうけした奴等は今は何処にいるのだろう。どこかへ雲隠れしている奴はまだ少しは恥ずかしさを感じることができるのだろうが、今だ大もうけしている奴ら、今だ政界にいる奴等はなんら罰も受けていないし、服役もしていない。東北の人たちだけでなく、世界中の人たちに被爆させているのだから何百回死刑になってもいい奴らばかりだ。
 小出先生など事故当初から言っていたことだが、福島の事故が収束するなんてありえない。核燃料は容器を突き抜けて手の施しのないような場所に、手の施しのないような形で存在しているのだ。1分もその場所に留まれないような所がどうして方がつくのだ。人間並みのロボットが出来るまで後何十年を要するのだ。その間は放射能出まくり。チェルノブイリのように石棺を作って覆い隠してしまえば少しは被爆から逃れられるかもしれないが、それが出来ない福島は今日もまたありえない程の放射能が漏れているはずだ。それは周辺地域だけでなく世界中を駆け巡って大地や海に落ちている。
 聞かなければ、見なければ無いも同じだ。知らなければ存在さえしない。多くの国民をあらゆる機関を使ってそうさせた。外国人等は朝飯前だ。良くぞ好んでやって来ると思うが、旨くだましているものだ。さて、これが逆ならどうだろう。原発事故を起こして今だなんら解決していない国に日本人が観光に行くだろうか。外国産のものにあれだけ神経質になっているのに、それよりもずっとずっと恐ろしいものに無関心。お上は嬉しかろう。赤子の手をひねるようなものだ。
 なんら手をつけていないところに同じような天災がやってきたらどうするのだろう。それこそ終わる。金持ちは国外に逃げ、貧乏人は放射能にまみれて生きる?死ぬ?それでもなお奴等の逃げ得を許すのか。


2017年02月02日(Thu)▲ページの先頭へ
云々
 「・・・・・・・云々」もしこれを読めない人間が薬剤師なら信用してもらえるだろうか。もしこれを読めない人間が、医者なら命を預けるだろうか。もしこれを読めない人間がパイロットならその飛行機に乗るだろうか。もしこの字を読めない人間が設計したとしたら、そのマンションに住むだろうか。もしこの字が読めない人間が設計したなら、その車に乗ることが出来るだろうか。もしこの字を読めない人間が教師なら、子供を預けることが出来るだろうか。もしこの字を読めない人間が軍隊を指示していたら、敵陣に突っ込むことができるだろうか。もしこの字が読めない人間が編集者だったら、その新聞や雑誌を購入するだろうか。もしこれを読めない人間がワイドショーのコメンテーターだったら信用するだろうか。もしこれを読めない人間が銀行の頭取だったら金を預けるだろうか。
 官僚の書いた答弁書を、あたかも自分の答弁のように読んだアホノミクスが「・・・・・でんでん」と読んだ。この程度の人間に国を牛耳られてこの国の庶民はよく我慢できるものだ。僕は少なくとも屈辱に耐えられない。アホノミクスが「信頼できる」と評した海の向こうのカルタとそっくりだ。奴等と同じ時代に生きたことが悔やまれる。


2017年02月01日(Wed)▲ページの先頭へ
緊急連絡
 いやはや困った。今度の日曜日に、かの国に帰国する女性達をスキーに連れて行こうと色々計画を練っているのだが、最寄り駅に電車で降りてからタクシーがどうやらないみたいだ。インターネットで探してタクシー会社に電話をしたら、2社が既に廃業していた。その事を知らずに電話をすると、本来なら「〇〇です」と最初に返ってくると思うのだが、どちらも無言だった。慌ててこちらが名乗らないといけないし、〇〇タクシーさんですねと確かめないといけなかった。なんて気まずい電話だろうと不愉快だったが、駅からスキー場まで僕の車では行けそうにないから、頼らざるを得なかった。
 智頭急行の特急電車が止まる大原駅にはタクシー会社があるみたいだが、そこからだと結構な距離がある。車にめっぽう弱いかの国の人たちがもつ距離ではない。スキー場に着くまでどのような道を走るのか分からないが、結構拷問に近い苦痛を与えてしまうかもしれない。最寄り駅のあわくら温泉駅からだと随分と近くなるのだが残念だ。
 勿論帰りは時間を約束して迎えに来て貰わなければならない。スキー場にお昼ごろ着くが、その後2時間過ごすか3時間過ごすかで迷っている。息子が先日ある南の国の人達を蒜山に連れて行ったら、滞在15分で帰ると言い出したらしいから僕も予断を許さない。まして携帯電話を僕は持っていないから、迎えの時間を約束しておかなければならない。融通は全く利かないのだ。こうなればやはり緊急時の連絡方法は、糸電話か、鳩の足に伝言をくくりつけて放すか、のろしを上げるしかない。白いのろしなら2時の迎え、黒いのろしなら3時だ。
 


   


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