栄町ヤマト薬局 - 2008/05/01


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2008年05月01日(Thu)▲ページの先頭へ
芸当

 7人の若い女性連れが入ってきた。その中の1人が風邪を引いている。日本語が出来る女性が症状を教えてくれた。一度聞いてから、確認のために咳は、頭痛はと質問すると、その女性が通訳してくれる女性より早く身振りで手振りで答える。明らかに僕の言葉をある程度理解している。
 以前通訳の女性が、仲間にとてもできた女性がいて、国に残した家族全員を1人で養っていると聞かされたことがある。その女性は、夜は疲れていても日本語の勉強をしていると聞いた。毎日どんなに疲れていても欠かさないそうだ。彼女が人一倍熱心なのは、家が貧しくて、国で働いていては家族を養えないから、どうしても日本で長く働きたいからだそうだ。働き手は彼女以外いないらしい。僕は今風邪の症状を訴えている子が、その女性だとすぐに気が付いた。
 僕は3日分の薬を現代薬で作った。恐らく彼女の訴えに忠実な処方だったと思う。3日分で400円。レジを打つと彼女が驚いた。通訳に確認をとっていた。通訳は僕が日本語を教えていた女性だから僕の性格はよく分かっている。これでいいというような仕草で、答えていた。彼女は財布から出していた千円札3枚をしまって、硬貨で払った。驚いたような顔をしていたが、安堵の表情も見えた。
 日本人がいやがる仕事を低賃金でやってくれる彼女らの、1日の収入の半分以上を、たった風邪ごときで使わすことは出来ない。休めば評価を落として日本にいられなくなる可能性もある。だから確実に回復してもらわなければならない。薬の質を落として渡したのではない。利益をとらなかったのでもない。正しい処方を正しい金額で渡しただけだ。ちょっと工夫すればこんな芸当は薬局ならどこででも出来る。豊かな人達ばかりが集まるところや、カリスマ薬局では出来ないかもしれないが、家賃もいらない、仕事が終われば2階に上がって寝るだけの田舎の薬局なら出来る。何より、言葉は通じないけれど、純朴そうなほほえみを絶やさない彼女らこそ、最高の動機付けになる。1人で大家族を養う20才の女性に会えただけで僕は幸せだ。ちょっとした工夫で役に立てるならそれも又嬉しいことだ。